デジタル全盛の近年でも、アナログなツールならではの良さというものがある。本稿ではタスク管理にアナログツールを用いる手法とその際のポイントについて紹介する。
効果的なタスク管理手法は個々人により異なる
SEの仕事は、常に自己研鑽を続け、時代とともに変化を続けていかなければならないように、タスク管理の手法やそれに用いるツールに関しても、「これが最適」というただ一つの解は存在しない。
従って以下で紹介する方法も、ベストな一つを紹介すると言うわけでも、全て使えばよいというわけでではない。自分にあったもの、正確には、管理すべきタスクと自身の置かれた状況に適したものを鑑みて、選択する事が必要だ。
タスク管理ツール(アナログ系)
アナログ系のタスク管理ツールを使うことのメリット・デメリットは以下の通りである。
メリット
- レイアウトの自由度が高い
タスク管理でよく行う、単純な箇条書きに加えて、メモのスペースをとったりといったレイアウトの自由度が高い。そのため、使っていくうちに少しずつカスタマイズを行い、自分の使いやすい形にしていくことができる。
- 図や絵などの挿入がしやすい
図や表などの付加的な情報を記載することに制約が無く、思いついたことを手早く視覚化できることに強みがある。当たり前だが色や筆記用具に制限もないため、配色や記号などに意味を持たせることで、自分好みにカスタマイズすることも可能だ。
- 手書きでタスクを書き出すことで記憶に定着する
手書きを行うことで手を動かしてアウトプットすることになるため、脳が刺激されタスクが記憶に定着しやすい。デジタルツールでは享受できない、アナログツールならではのメリットである。
- TPOへの配慮がしやすい
昨今ではノートPCやタブレットなどデジタル機器を使用してメモを取ることに対しての理解は深まってきている。しかしながら、依然として、相手や場面によってはデジタル機器を使ったメモが取りづらいこともある。そういった場面でも手帳であれば、取り出しやすく、相手への配慮もしやすい。
- クリエイティビティが刺激されやすい
時代の変化と共に、手書きでモノを書くという機会は減ってきている。ちょっとした思い付きに任せて筆を走らせる、ちょっとした絵を描いてみる。そんな行動が我々のクリエイティビティを刺激し、新たな気付きにつながる。そういった機会はキーボードを叩いているより、アナログな環境下において生まれやすいでのはないだろうか。
デメリット
- 統計的な分析がしづらい
基本的にアナログのタスクリストは、振り返りには不向きである。なぜならば、記載した内容を集計するのに手間がかかるからだ。過去のタスクの傾向分析を行う場合にはデジタルツールを使うほうが良いだろう。
※タスクの分類や考え方については前項(最強SEのタスク管理術)参照してほしい。
- 他のドキュメントへの転記に時間がかかる
自身のタスクを他者に共有/報告するなどの際に、ドキュメントへの転記が必要になる。そしてそれは、多くの場合で二度手間となってしまう。
- 物理的に紛失する可能性がある
アナログのタスク管理ツールはその性質上、紛失しやすい。手帳やノートはもとより、付箋がいつの間にか剥がれてしまい、タスクを忘れてしまったというのでは元も子もない。
- バックアップの作成が難しい
アナログのタスク管理ツールにバックアップを作成することは困難だ。当日処理し切れなかったタスクを、念のため付箋から手帳へ転記する、などという例はあるかもしれないが、基本的に同じことを手書きで二重に記載するのは時間の無駄だ。
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代表的なタスク管理ツールと特徴(アナログ)
アナログでタスク管理を行う場合の代表的な手法を紹介する。
手帳による管理
オーソドックスな、手帳にタスクを記載する方法である。各手帳のレイアウトにもよるがリフィルなどを活用することで自由度の高いレイアウト構成が可能だ。
手帳にタスクを記載することで、スケジュールとToDoの紐付けが容易に行えるという利点がある。自分にあった手帳に仕事の全てを集約することで、錬度も高まりさらに効率的になるだろう。
活用のポイント
1.スケジュール表とTodoを紐付けて記載する
手帳はスケジュール管理にもよく用いられるが、Todoとスケジュール表を効果的に組み合わせて管理しよう。
タスクリストには期限を記載するスペースを確保し、出来る限りタスクの期限を明記するようにしよう。また、重要なタスクはスケジュール表にマイルストーンとして転記すると良いだろう。それにより、スケジュールとタスクの関連性を可視化することが可能だ。ポイントは、スケジュール表とタスクの紐付けは重要なものに限って行うということだ。すべてのタスクをスケジュール表と紐付けようとすると管理が大変であるし長続きしない。
慣れてきたら範囲を広げても良いが、はじめは絶対に忘れてはならない重要なタスクに絞って始めることが長続きするコツだ。
2.メモスペースを用意してアイデアやタスク状況など追記する
タスクの状況を記載するために紙面は使い切らず、余白を残すようにしよう。余白は後で見返した際に気付いたことを追記したり、タスクの状況などを更新していくために使おう。
アナログツールの特徴である自由度の高さや、手書きによるクリエイティビティを発揮するためには余裕を持ったスペース設計が必要だ。
3.紛失を想定する
手帳をタスク管理に使用する場合、不測の事態に備えたバックアップをどうするか、ということには注意したい。なぜならば、手帳に情報を集約することで効率は高まるが、その一方で手帳を紛失したら何も仕事が進まない、スケジュールがわからないという事態にもなりかねないからだ。電子媒体であれば定期的にコピーしておけば問題ないが、手帳を全量コピー機にかけるというのは現実的ではない。
記載するタスクの粒度を調整したり、特に大切な予定については電子媒体にも並行して保存するなど、不測の事態があって紛失しても仕事を続けられるよう備えておくことが必要だ。
また、手帳を取り出す頻度があまりにも増えすぎると紛失のリスクも高まる。アナログでタスク管理を行う場合には、サブのノートなどを利用して普段はノートを持ち歩き、すぐに終わる小さなタスクはそちらで管理を行い、日を跨ぐすこし大きめのタスクは手帳で管理する、などの工夫で紛失のリスクを抑えることも有効だ。
付箋による管理
こちらもアナログのタスク管理としてはオーソドックスな方法で、タスクを付箋に書いて目に付く場所に張っていく。タスクが完了したら剥がして捨てる。というシンプルなものだ。
目に付くところに張ればあとどれだけタスクが残っているのかがわかりやすく、タスクが完了した付箋を剥がすことで達成感も得られる。タスクがたまっていない状態を保ちたいという欲求が働くため、モチベーションを刺激すると言う効果もあるだろう。
張って剥がしてが容易であるため、転記がしづらいというアナログ管理のデメリット小さい。また、たくさんの付箋をグルーピングすることで頭の中を整理することにも役に立つツールだ。
活用のポイント
記載するペンの色を工夫する
付箋は小さいので細やかな情報が欠落しがちだ。緊急度や依頼元など、自分でルールを定めて付箋に記載するペンの色を区別することで記載する内容も少なく、視覚的にもわかりやすくすることができる。
例えば、赤は緊急タスク、オレンジはその日中にやる、緑は時間が出来たらやる、などの分類するだけでも、自分がすべきこととその緊急度をひと目で見ることができて便利である。
自然と剥がれてしまわない場所に張る
付箋によるタスク管理で最も気をつけなければならないのが、剥がれ落ちてしまうことによる忘失だ。付箋は目につきやすいというだけでなく、仮に剥がれ落ちたとしても紛失してしまわない場所に張ろう。
足の長そうなタスクは分解する
付箋を使った管理の真髄は、気軽にペタペタと貼り帰るときには全てきれいに剥がし終えた状態に保つことで、その日のタスクを着実に終わらせることにある。
付箋が残っていることが常態化してしまうと、その利点も失われてしまうし、精神衛生上もよくないので、足の長そうなタスク(=粒度の大きなタスク)は他の媒体に記載したり、分割するなどの工夫が必要だ。
まとめ
ここではアナログ系のタスク管理ツールの特徴と、代表的なツールと利用時の注意点を紹介した。デジタル全盛の時代であるが、アナログの良さが失われたわけではない。また、アナログのタスク管理で身に付けた手法や考え方はデジタルにも応用可能である。
最強SEたるもの、メモとペンだけの状況においても適切にタスク管理ができるよう、研鑽に励みたい。
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